雪が降る度、白梅が香る度、君を想うよ。
一緒にいる時間は長くはなかったけれど。
記憶の中にいる君は誰よりも深く。
ねぇ、巴。 君は今幸せですか。
intermission
小さな灯取りの窓の向こうに灰色の空が広がって、 そこから白い雪が舞い落ちる。
道理で寒いはずだと、首に巻いた、君によく似合っていた 紫のショールに顔を埋めた。
瞳を閉じて、想うのは君の微笑む姿。
君をなくした哀しみも、君の幸せを奪った痛みも、 何も癒せぬまま。
それでも俺は生きていて、今日も、そして明日もまた 人を斬る。
そうして、きっと俺は数えきれないほどの幸せを奪って いくんだろう。
その先に、それ以上の幸せがあることを、信じているから。
でも。
でも、どれだけ望んでも。
君の幸せは、もう俺には創ることも守ることも出来ないのだ けれど。
だからせめて。
祈らせて、くれるだろうか。
君が、そっちで幸せでいられるように。
「緋村」
「はい。今行きます」
苦手だと言っていた笑顔が、もう、途絶えないように。
『最愛の貴方へ』 03. 幸せですか
初出20081130 / 再掲20110103